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泣ける写真集

 『写真インパクト』展で最も心に残ったのは、天才アラーキーこと荒木経惟の作品である。1989年から1990年にかけて撮影された病気の妻が亡くなるまでの二人の写真シリーズである。
 この写真を見るまでは、ヌード写真のアラーキーしか正直知らなかった。展示されている5枚の写真はコメントが添えられて、そのときの様子が想像できる。カメラの機能として日付を入れてあるので、時系列もわかる。二人で撮った最後の写真、手をつないだ写真、チロ(ペットの猫)と一緒に寛いでいる写真、飛行機雲、スッポン鍋、チロの写真集と一緒になど、知らなかったアラーキーの一面を見ることができた。そして、その写真に心を打たれた。
 検索すると図書館にあることがわかったので、早速借りてみた。『センチメンタルな旅 冬の旅』である。
 昨日見た、教科書の写真を題材にしたベージの見出しが「ここでシャッターを切った理由」だった。
 アラーキーはなぜここでシャッターを切ったのだろうか? と考えながら写真集を見た。
 妻の容態が急変して病院へ向かう途中の写真が何枚も続く。展示されている5枚の間をつなぐさらに多くの写真たち。時系列に並び、時折添えてあるコメントからそのときの気持ちを想像する。
 「私小説こそもっとも写真に近いと思っている」アラーキー。
 泣けた。
 これは最後のページの写真。
泣ける写真集_e0040515_159952.jpg


2015.7.7 1:05追記
 以前まで存在していたのに、途中から不在を示す写真。容態急変を聞いて、病院へ駆けつける時の何枚もの移動途中の写真がそのときの心情を想像する行為を掻き立てる。
 堀辰雄の『風立ちぬ』を思い出した。
by nobuhiroshow | 2015-07-06 02:00 | 美術館


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