ワークショップの翌日は、中原悌二郎賞授賞式である。
会場入り口には、ワークショップに参加した学校の作品の中から、8月12日のプレワークショップに参加した2つの学校の作品が代表して展示してある。
中原悌二郎賞選考委員長の酒井忠康氏(世田谷美術館館長)より選考について、大平氏の手技のもつ意味を評価して、「手が生き残る場所はここだ」という意味を込めて、この2年間で発表され推薦された600名の中から選ばれたという説明があった。
また、記念講演においても「彫刻の見方」と題して、映画『おくりびと』の映画の1シーンから、彫刻において最も大切なことは「さわる」ということだ。そして高村光太郎の
『触覚の世界』を是非読む様に勧められた。
その他にも、「パソコンは怖い。思考のプロセスが残らない。残るのは結果のみ。しかし、美術は違う。結果じゃなくプロセス。」
ドガは晩年目が見えなくなり、彫刻を作り出す。「目に見えるものの結果としてのデッサンではなく、デッサンはものの見方の提案だ。」
棟方志功のトイレに描いた天井画(魚や虫など)を記念館に移設した際に汲取式のあの匂いがなくなり、別な印象になった。世田谷美術館でアールヌーボーの作品展をした際に、当時の香水を一カ所だけ漂わせる仕掛けをして、鑑賞させたなど、むしろ彫刻は嗅ぐものでもあるんだというような話をして戴いた。
大平氏からも、アメリカにおいて彫刻の道具を全て盗まれた経験から、身近な捨てられた建築廃材などのものから何かできないか? カッターナイフやのこぎりでの制作を進める。
そして、人種の多様なアメリカで表現するために『100パーセント自分のものは何なのか?』考えたという。
作品を作るために材料を買うのではなく、あるもので考える。
それを中学生にやらせるとどうなるかが今回のワークショップ。
「今の現実のいらないもの(ゴミ)を混ぜるとどうなるか?」という投げかけもあった。
「今回のワークショップのような経験は記憶としてずっと忘れられないものになる。このことを子ども達に伝えたかった。」
「決まったものを崩すために、自分の価値観でものを捉えるべき」
最後は、参加した中学校を代表して旭川中学校の生徒達からの花束が贈呈された。